文学散歩

金子みすゞを歩く

金子みすゞ情報→金子みすゞ記念館

金子みすゞ(本名テル)は、明治36年(1903)、山口県大津郡仙崎村(現在の長門市仙崎)に生まれ。成績優秀でおとなしく、読書が好きで誰にでも優しい人だったという。

みすゞが童謡を書き始めたのは20歳の頃。4つの雑誌に投稿した作品がすべて掲載されるという鮮烈なデビューを飾り、西條八十に「若き童謡詩人の中の巨星」と賞賛されるなどめざましい活躍をみせた。

しかし、その生涯は決して明るいものではなく、23歳で結婚したものの、文学に理解のない夫から詩作を禁じられてしまい、さらには病気、離婚と苦しみが続いた。ついには、前夫から最愛の娘を奪われないために、26歳の若さで自死の道を選んだ。みすゞの作品は散逸し、いつしか幻の童謡詩人といわれるようになった。

それから約50年、埋もれていたみすゞの作品は、児童文学者の矢崎節夫氏によって世に送り出され、小学校の「国語」の教科書に掲載されるまでになった。
                                           「金子みすゞ記念館」ウェブサイトより引用。

 仙崎八景を歩く
  仙崎みすゞ公園  長門・詩碑めぐり  下関・金子みすゞ詩の小径
   
   
●仙崎八景を歩く 08/7/20 *istDS2  08/8/10 K10D
金子みすゞが仙崎の町を童謡8編に詠った場所を仙崎八景という。
   
(1)小松原
小松原、
松はすくなくなりました。
 
いつも木挽(こび)きのお爺さん、
巨きな材木ひいてます。
 
押したり、引いたり、その度に、
白帆が見えたり、かくれたり、
 
かもめも飛びます、波のうへ、
雲雀(ひばり)も啼きます、空のなか。
 
海もお空も春だけど、
松と木挽きはさみしさう。

ところどころに新しい、
家が建ちます、
小松原、
松はすくなくなりました。
   
(2)祇園社(八坂神社)
はらはら
松の葉が落ちる、
お宮の秋は
さみしいな。
 
のぞきの唄よ
瓦斯(ガス)の灯よ、
赤い帶した
肉桂(にっけい)よ。

いまは
こはれた氷屋に、
さらさら
秋風ふくばかり。
   
(3)極楽寺
極楽寺のさくらは八重ざくら、
八重ざくら、
使ひにゆくとき見て來たよ。
 
横町(よこちょ)の四つ角まがるとき、
まがる時、
よこ目でちらりと見て來たよ。
 
極楽寺のさくらは土ざくら、
土ざくら、
土の上ばかりに咲いてたよ。
 
若布結飯(わかめむすび゙)のお辨當(べんと)で、
お辨當で、
さくら見に行つて見てきたよ。
   
(4)弁天島 人工島の一角に、セメントで固められた小さな島がある。
「あまりかはいい島だから
ここには惜しい島だから、
貰つてゆくよ、綱つけて。」

北のお國の船乘りが、
ある日、笑つていひました。

うそだ、うそだと思つても、
夜が暗うて、氣になつて、


朝はお胸もどきどきと、
駈けて濱辺へゆきました。

辨天島は波のうへ、

金のひかりにつつまれて、
もとの緑でありました。
   
(5)王子山
公園になるので植ゑられた、
櫻はみんな枯れたけど、


伐られた雑木の切株にや、
みんな芽がでた、芽が伸びた。

木(こ)の間に光る銀の海、
わたしの町はそのなかに、
籠宮みたいに浮んでる。

銀の瓦と石垣と、
夢のやうにも、霞んでる。

王子山から町見れば、

わたしは町が好きになる。

干鰮(ほしか)のにほいもここへは來ない、

わかい芽立ちの香がするばかり。
   
(6)大泊港
山の祭のかへりみち、
送つてくれた伯母様と、
別れて峠を降りるとき、
杉の梢にちかちかと、
きれいな海が光つてた。

海に帆柱、とまり舟、
岸にちらほら藁の屋根、
みんなお空にあるやうな、
みんなお夢にあるやうな。

峠くだれば蕎麥畑
畑のはてに見えるのは、
あれはやつぱり、大泊
ふるいさみしい港です。
   
(7)波の橋立 壁紙1024×768
波の橋立よいところ、
右はみずうみ、もぐつちよがもぐる、
左や外海、白帆が通る、
なかの松原、小松原、
さらりさらりと風が吹く。
  海のかもめは
  みづうみの
  鴨とあそんで
  日をくらし、
  あをい月出りや
  みづうみの、
  ぬしは海辺で
  貝ひろふ。
波の橋立、よいところ、
右はみづうみ、ちよろろの波よ、

左や外海、どんどの波よ、
なかの石原、小石原、
からりころりと通りやんせ。

高山から見た波の橋立
   
(8)花津浦(はなづら) 遊覧船に乗るとすぐそばを通過する。陸から行くには小さな峠越えをしなければならない。

   
濱で花津浦眺めてて、
「むかし、むかし」と
ききました。
濱で花津浦みる度に、
こころさみしく
おもひ出す。

「むかし、むかし」と
花津浦の
その名の所縁(いわれ)きかされた
郵便局の小父(おじ)さんは、
どこでどうしてゐるのやら。

あのはなづらの
はな越えて、
お船はとほく消えました。

いまも入日に海は燃え、
いまもお船は沖をゆく。

「むかし、むかし」よ
花津浦よ、
みんなむかしになりました。

仙崎小学校近くから花津浦の鼻藻岩が見える。みすゞも通学の途中で同じ風景を見ていたのではないだろうか。
   

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