シネマ紀行
 廃市(はいし)
 ロケ地〜福岡県柳川市 2015/6/26・7/24 取材

 1984年 PSC+新日本制作+ATG提携作品  16ミリ・スタンダードサイズ 105分
[監督]
大林宣彦
[原作]福永武彦
[脚本]内藤誠、桂千穂
[撮影]阪本善尚
[音楽]作曲大林宣彦・編曲宮崎尚志
[出演]小林聡美、山下規介、根岸季衣、峰岸徹、入江若葉、尾美としのり、林成年、入江たか子ほか

この映画は、柳川市と柳川のひとびとの友情を得て生み出された。
この物語は、現実の柳川市を舞台としたものではないが、
柳川はこのようなひとの心の模様についての空想の物語りのよく似合う、美しくやおやかな水の都である。

これは、映画のイントロで映し出される大林宣彦監督のメッセージ。

私の郷里柳河は水郷である。さうして静かな廃市の一つである。
さながら水に浮いた灰色の柩である。

柳川で生まれた歌人・詩人の北原白秋のこの言葉が、原作の発想のもとになっているのではないかと思う。

この映画の印象は暗いが、現実の柳川は明るく、観光客でにぎわっている。
監督が述べているように、現実の柳川市を舞台にしたものではないにしても、そのギャップを埋めるのに戸惑ってしまう。
大林宣彦監督作曲の室内楽のような音楽が、柳川の風景によく合っていて心地よかった。


                                                                                                                                                                                                                                       
水天宮付近。お祭りのシーンなどに登場する。
 

江口(山下規介)は大学生の頃、卒論を書くために、一夏をある運河の町で過ごした。
江口が親戚から紹介された宿泊先の貝原家を訪れると出迎えたのはまだ少女の面影を残す娘・安子(小林聡美)だった。
その夜、寝つかれぬまま彼は、波の音、櫓の音、そして女のすすり泣きを耳にする。
次の日、江口は安子の祖母・志乃(入江たか子)に紹介されるが、一緒に暮らしているはずの安子の姉・郁代根岸季衣)は姿を見せない。

ある日、貝原家から農業学校に通っている青年・三郎(
尾美としのり)の漕ぐ舟で江口は安子と出かけた。
町がすっかり気に入ったという彼に、「この町はもう死んでいるのよ」といつも快活な安子が、暗い微笑を浮かべるのだった。
その帰り、江口は郁代の夫・直之(
峰岸徹)を紹介された。

安子の母の十三回忌が行なわれた席で、直之からもこの町が死んでいるという言葉を聞く。
その夜、彼は直之と安子がひっそりと話しているのを見た。
次の日、母親の墓参りに寺へ出かけるという安子に付き合った江口は、その寺で郁代に出会う。
安子の話だと、郁代が寺に移ってから直之も他に家を持ち、秀(
入江若葉
)という女と暮らしているとのことだった。
水神様のお祭りの日、江口は直之からその理由を知った。
郁代は直之が他の女を愛していると思って、自分から逃げて行ってしまった。直之は郁代を今でも愛しているという。

そして、八月の末、直之が秀と心中をはかったのだ。
通夜の席で、郁代は直之が愛していたのは安子だったことを知る。二人を幸福にしてやりたいから、尼寺に入るつもりで寺に入ったと告げる。
しかし、安子は兄さんは姉さんを愛していたというのだった。郁代は「あんたが好いとったのは誰やった?」と泣きくずれる。

夏も終わりに近づき、卒論を仕上げた江口は、安子と三郎に見送られて列車に乗り込んだ。
別れ際、三郎の言葉で江口は安子を愛していたことに気づくが、今ではもうおそかった。
そして彼は町が崩れていく音を聴いたように思うのだった。
...〜映画.COMより引用

貝原家へむかう

国鉄佐賀線の筑後柳河駅で降りた江口は、長命寺付近、天満神社付近、旅館柳屋付近などを通って貝原家へむかう。
筑後柳河駅は昭和62年(1987)に佐賀線が廃止となり取り壊され、長命寺付近は様変わりし、旅館柳屋が取り壊されて賃貸住宅になっていた。
貝原家の外観は瀬高町の旧家でロケされたそうだが、今は存在しないという。


長命寺前。江口は右手から来て手前に歩いて行く。


天満神社前。当時は両側に家が密集していた。


左手が旅館柳屋があった所、正面の自動販売機の所がたばこ屋だった。


掘割と橋が何度か登場するが、場所の特定には時間がかかりそうだ。

掘割の散策
江口は気分転換に掘割沿いを散策する。


江口は、殿の倉前の沖の端橋の欄干にもたれてアイスキャンデーを食べる。
殿の倉は変わらないが、欄干は真新しい。


江口は、ここにあった食堂の前でかき氷を食べる。
楽天食堂はなくなっていた。

安子の母親の墓参り
江口は母親の墓参りに行くという安子に同行する。
柳川藩主立花邸宅・御花裏の石段から三郎があやつる舟に乗り込み、真勝寺裏で降りる。寺としてロケされたのは福厳寺の境内だった。
映画には石垣の上に立つ大きな塔が登場して印象的だったが、この塔は福厳寺では見つからなかった。


江口と安子はここから船に乗り込む。木の橋は当時はなかった。


ここで船を下りる。


映画の画像で確認してみると、
当時は護岸工事がされていない自然のままで、水辺は草でおおわれ、水路の幅は狭かった。手前の並木がないので墓地が見通せる。
様変わりしていてあまり自信はないがロケ地はここだと思う。

 
江口、安子、三郎の3人は、福厳寺の柳川藩主立花家の墓所の中や本堂横の灯篭が並ぶところを歩く。


広々とした福厳寺の全景。本堂のむこう側に柳川藩主立花家の墓所がある。


映画にも登場する並倉は柳川を代表する風景。