シネマ紀行
 東京物語
 広島県尾道市

  1953年 松竹 135分
[監督]小津安二郎
[脚本]野田高悟 小津安二郎
[撮影]厚田雄春
[音楽]斎藤高順
[出演]
笠智衆 東山千栄子 原節子 杉村春子 山村聡 三宅邦子 香川京子 中村伸郎 大阪志郎


周吉(笠智衆)、とみ(東山千栄子)の老夫婦は住みなれた尾道から二十年振りに東京にやって来た。

途中大阪では三男の敬三(大阪志郎)に会えたし、東京では長男幸一の一家(山村聡、三宅邦子)も長女志げの夫婦(杉村春子、中村伸郎)も歓待してくれて、熱海へもやってもらいながら、何か親身な温かさが欠けている事が 、やっぱり物足りなかった。

それというのも、医学博士の肩書まである幸一も志げの美容院も思っていた程楽ではなく、それぞれの生活を守ることで精一杯にならざるを得なかったからである。

周吉は同郷の老友との再会に僅かに慰められ、とみは戦死した次男昌二の未亡人紀子(原節子)の変らざる心遣いが何よりも嬉しかった。

ハハキトク---尾道にいる末娘京子(香川京子)からの電報が東京のみんなを驚かしたのは、老夫婦が尾道へ帰ってまもなくの事だった。脳溢血である。とみは幸一に見とられて静かに息をひきとった。

駈けつけたみんなは悲嘆にくれたが、葬儀がすむとまたあわただしく帰らねばならなかった。

若い京子には兄姉達の非人情がたまらなかった。
紀子は京子に大人の生活の厳しさを言い聞かせながらも、自分自身いつまで今の独り身で生きていけるか不安を感じないではいられなかった。

東京へ帰る日、紀子は心境の一切を周吉に打ちあけた。
周吉は紀子の素直な心情に今更の如く打たれて、老妻の形見の時計を紀子に贈った。
翌日、紀子の乗った上り列車を京子は丘の上の小学校から見送った。
周吉はひとり家で身ひとつの侘びしさをしみじみ感じた。(goo映画より引用)

<参考サイト>「東京物語」を歩く

■住吉神社の石灯籠と中央桟橋(土堂一丁目)

映画は、住吉神社の石灯籠のアップからはじまる。
神社のむこうに見えるのが中央桟橋の東の部分。中央桟橋は、他のシーンでも、桟橋の中から見たアーチ型の屋根が映し出される。

住吉神社は、浄土寺境内にあったが1741年に現在地へ移設された。ロケ当時は、松も塀もなくすっきりとしていた。

映画の中で、とみの葬式のあとの会食シーンの会話に出てくる「住吉まつりの晩の花火」は、「尾道住吉花火まつり」のことで、今でも尾道を代表するまつりである。

中央桟橋の前には尾道商工会議所があり、この中を通って行くことになるが、一般の立ち入りは禁止されている。この桟橋は、1938年の建造で、日本最古の浮き桟橋。

   

■栗吉材木店の通り(久保一丁目)

映画の冒頭のシーン、栗吉材木店の看板が見える通りを小学生たちが学校へむかっている。

たいへん趣きのある通りだったようであるが、現在では車が頻繁に走るどこにでもある風景。







   

■浄土寺(東久保町)


灯籠の前で。
笠知衆、原節子、そして小津安二郎。
 
周吉の姿が見えないので、紀子が探しに行くと、周吉が尾道水道の景色を見ている。「きれいな夜明けだった。きょうもあつーなるぞぉ」と言いながら、紀子と一緒に家へ戻ってゆく。

灯籠があった辺りに鐘楼が出来て、灯籠はお堂の前に移設されていた。

尾道で俳優が登場するロケは、このシーンと京子が小学校へむかうシーン、京子が小学校の校舎から紀子の乗る列車を遠く見送るシーンくらいで、時間にして2分弱ではないだろうか。

尾道ロケに参加した俳優は、笠知衆、原節子、香川京子の3人だけだった。屋内のシーンはすべて、松竹大船のセットで撮影されている。


   

竹村家(久保3丁目)

とみの葬式が終わって、海岸通りの料理屋で会食するシーンが竹村家。

竹村家は、監督、俳優、メインスタッフの宿舎となった。ロケハンは1953/6/24〜7/1、ロケ は 同年8/12〜8/19

竹村家はロケ当時とほとんど変わっていないらしいが、「無声呼人(声なくして 人を呼ぶ)」の精神を貫いているので、取材は受け付けていない。料理屋のシーンもセットだったので、実際の竹村家の広間とは異なるが、2階からの景色を見るには泊るしかない。


   

筒湯小学校(東久保町)


 
京子が小学校の校舎から、紀子が乗る列車を見送るシーンに登場

筒湯小学校は、浄土寺の西側の坂道を登ったところにある。
2000年3月に廃校になっているとのこと。ロケ当時は木造だったが、4階建ての鉄筋コンクリートの校舎が残っている。ご覧のように外観はきれいで、今は何に使われているのだろうか。

教室の授業風景は松竹大船のセット。







   

 <紀子と義妹京子の会話>
   

 <紀子と義父周吉の会話>
   

紀子


 

子どもって大きくなると、だんだん親から離れてゆくのじゃないかしら。お姉様ぐらいになると、もうお父様やお母様とは別のお姉様だけの生活ってものがあるのよ。誰だってみんな自分の生活が一番大事になってくるのよ。

紀子




 

わたくし、いつまでもこのままじゃいられないような気もするんです。このままこうして一人でいたら、一体どうなるんだろうなんて、夜中にふと考えたりすることがあるんです。一日一日が何事もなくすぎてゆくのがとっても寂しいんです。どこか心の隅で何かを待ってるんです。ずるいんです。

周吉

いやー、ずるーはない。

紀子
 

いいえ、ずるいんです。そういうこと、お母様には申し上げられなかったんです。

周吉
 

ええんじゃよ、それで。やっぱり、あんたはええ人じゃ、正直で。

紀子

とんでもない。

京子
 

そうかしら、でもあたしはそんな風になりたくないわ。それじゃ、親子なんてずいぶんつまらない。

紀子
 

そうねえ、でもみんなそうなってゆくんじゃないかしら。だんだんそうなるのよ。

京子

じゃ、お姉さんも。

紀子

ええ、なりたかないけど、やっぱりそうなってゆくわ。

京子

いやね、世の中って。

紀子

そう、いやなことばっかり。

■周辺の風景


おのみち映画資料館(久保1丁目)

割烹旅館「魚信」(久保1丁目)

浄土寺山門(東久保町)

浄土寺多宝塔(東久保町)