山頭火と歩く

京町

2017/12/21-22
K-5Us
   
九月十七日 曇、少雨、京町宮崎県、福田屋(三〇・上)

今にも降り出しさうな空模様である。
宿が落着いてゐるので滞在しようかとも思ふたが、金の余裕もないし、また、ゆつくりすることはよくないので、
八時の汽車で吉松まで行く(六年前に加久藤越したことがあるが、こんどは脚気で、とてもそんな元気はない)。
二時間ばかり行乞、二里歩いて京町、また二時間ばかり行乞、街はづれの此宿に泊る。
豆腐屋で、おかみさんがとてもいゝ姑さんだ。

 

こゝには熱い温泉がある。
ゆつくり浸つてから、焼酎醸造元の店頭に腰かけて一杯を味ふ(藷焼酎である、このあたり、焼酎のみでなく、すべてが宮崎よりも鹿児島に近い)。

このあたりは山の町らしい、行乞してゐると、子供がついてくる。旧銅貨が多い、バツトや胡蝶が売り切れてゐない。

人吉から吉松までも眺望はよかつた。汽車もあえぎあえぎ登る、
桔梗、藤、女郎花、萩、いろんな山の秋草が咲きこぼれてゐる、惜しいことには歩いて観賞することが出来なかつた。

なんぼ田舎でも山の中でも、自動車が通る、ラヂオがしやべる、新聞がある、はやり唄が聞える。……

宮崎県では旅人の届出書に、旅行の目的を書かせる。
なくもがなと思ふが、私は「行脚」と書いた。いつぞや、それについて巡査に質問されたことがあつたが。

今日出来た句の中から、――

  はてもない旅の汗くさいこと
  このいたゞきに来て萩の花ざかり
  山の水はあふれあふれて
  旅のすゝきのいつ穂にでたか
  投げ出した足へ蜻蛉とまらうとする
  ありがたや熱い湯のあふるゝにまかせ

此地は県政上は宮崎に属してゐるが、地理的には鹿児島に近い。言葉の解り難いのには閉口する。
藷焼酎をひつかけたので、だいぶあぶなかつたが、やつと行き留めた。
夜はぐつすり寝た、おかげで数日来の睡眠不足を取りかへした。南無観世音菩薩

このいたゞきに来て 萩の花ざかり

えびの市向江の老人福祉センターの前庭にある。

老人福祉センターは国道268号線の北側にあり、カーナビに入っていた。

ありがたや 熱い湯のあふるるにまかせ

えびの市京町の温泉広場にある。

場所が分かりにくいが、国道447号線を北へ進むと西側にある。

旅のすすきの いつ穂にでたか

えびの市立図書館の裏庭にある。


[山頭火と歩く][次へ]