山頭火と歩く

四国遍路


 ■昭和14年11月5日 快晴、行程五里

すっきり晴れあがった。昨日の時化は夢のやうに。
四時に起きて六時に立つ。
今日の道はよかった、すばらしかった。
山よ、海よ、空よ、と呼びかけたいやうだった。
波音、小鳥、水、何もかもありがたかった。
太平洋を昇る日
途中時々行乞。

   
ひよいと四国へ晴れきっている
   ほろほろほろびゆくわたくしの秋


第23番薬王寺から第24番最御崎寺までは約
76キロ。山頭火が23番に参拝したのは11
月3日、24番に参拝したのは11月6日。四
国の空と海を満喫しながら、3日間かけて歩い
た。

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太平洋の日の出。
約60年前、山頭火もこの朝日を見た。

 ■昭和14年11月6日 曇、時雨、晴、行程六里

   朝すこしばかりしぐれた。七時出立。
   行乞二時間、銭四銭、米四合あまり功徳をいただいた。行乞相は悪くなかったと思ふ。

   室戸岬の突端に立ったのは三時頃であったらう。室戸岬は真に大観である。限りなき大空、果てしなき大洋、
   雑木山、大小の岩石、なんぼ眺めても飽きない。眺めれば眺めるほどその大きさが解ってくる……。ここにも
   大師の行水池・苦行窟などがある。草刈婆さんがわざわざ亀の池まで連れていってくれたが、亀はあらわれな
   かった。婆さんご苦労さま、ありがとう。

       いちにち物いはず波音
       こんやはひとり波音につつまれて
       食べて寝て月がさしいる岩穴


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      海岸から室戸岬灯台を見る。         空海修行の伝説地・御蔵洞。
      灯台の向こうに第24番札所がある。


 ■昭和14年11月21日

早起、すぐ上の四十四番に拝登する。老杉しん
しんとして霧ふかい、よいお寺である。

八時から九時まで久万町行乞、十三銭、米二合。

霧の中を二里ちかく歩いてゆくと三坂峠、手足
の不自由な同行と道連れになり、ゆっくりとあ
るく(鶏を拾った話はをかしかった、)遍路み
ちはあまり人通りがないと見えて落葉が深い。

 
朝あゐりはわたくし一人の銀杏ちりしく


山頭火が歩いたのは今の国道33号線だったか
どうか分らないが、いずれにせよ当時は交通量
は少なかったであろう。が、現在は愛媛と高知
を結ぶ幹線、交通量は非常に多い。
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大宝寺参道の老杉と石仏。三坂峠の道標。