山頭火と歩く

由布院


 ■昭和5年11月10日
 雨。晴。曇。 11月11日 晴。時雨ー初霰。

沿道のところどころを行乞して湯ノ平温泉といふこゝへ着いたのは四時、さっそく一浴一杯、
ぶらぶらそこらあたりを歩いたことである。
       
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300年の歴史が刻まれた温泉街の
石畳の坂道。
ここ湯ノ平といふところは気に入った、いかにも山の湯の町らしい、石だたみ、宿屋、茶屋、湯坪、料理屋、等々もおもしろいね。

   あんたのこと考へつゞけて歩きつゞけて

   阿蘇がなつかしいりんだうの花

   秋風の旅人になりきってゐる


くり返していふが、こゝは湯もよく、宿もよかった。よい昼であり、よい夜であった。(それでも夢を見ることは忘れなかった)

   しぐるるや人のなさけに涙ぐむ

   夕しぐれいつまでも牛が鳴いて

   ひとりあたゝまってひとりねる

山頭火は温泉が好きだった。日記の中でおとずれた温泉の感想を書いているが、湯平温泉はよほど気に入ったのかベタほめである。
      
湯歩平温泉入口付近の県道脇の句碑。
句の下に、「行乙記」の一節と山頭火が泊まった
大分屋の写真。
湯平駅前の句碑。
2013/11/1 EOS 5D
 

 ■昭和5年11月12日 晴。曇。初雪。

湯の平の入口の雑木林もうつくしかったが、このあたりの山もうつくしい。
四方なだらかな山に囲まれて、そして一方はもくもくともりあがった由布岳ー所謂、豊後富士ーである、高原らしい空気がたゞよってゐる、由布岳はいい山だ、おごそかとしたしさとを持ってゐる。
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山頭火が「もくもくともりあがった」と表現した由布岳
(久大本線由布院ー南由布)
 洗うてそのまゝ
   河原の石に干す


 寝たいだけ寝たからだ
   湯に伸ばす



11月11日に初霰が降り、12日に初雪が降っている。

現在よりも早いのではないだろうか。