司馬遼太郎の風景 奈良散歩 東大寺・二月堂界隈 02.5.30 CAMEDIA

東大寺の境内には、ゆたかな自然がある。

境内は華厳世界のように広大である。一片約一キロの正方形の土地に、二月堂、開山堂、三月堂、三昧堂などの堂宇や多くの子院その他の諸施設が点在しており、地形は東方が丘陵になっている。ゆるやかに傾斜してゆき、大路や小径が通じるなかは、自然林、小川、池があり、ふとした芝生のなかに古い礎石ものこされて
いる。

日本でこれほど保存のいい境内もすくなく、それらを残しつづけたというところに、この寺の栄光があるといっていい。

 司馬さんは、「奈良散歩」の中で、談山神社、唐
 招提寺、興福寺、東大寺をとりあげているが、特
 に二月堂界隈がお気に入りだったようである。し
 たがって、ここでは二月堂界隈にしぼって紹介し
 てみようと思う。

 nara-dohyo-oji.jpg (69873 バイト) nara-dohyo-todaiji.jpg (85898 バイト)
 大路の道標。       境内の道標に二月堂の文字。
 大阪、京の文字。

  大仏殿 96.11.19

nara-todaiji.jpg (204618 バイト) 東大寺境内は風景が多様で、どの一角も他に類がない。ふつうはその南の一辺からこの寺を見る。南大門は建材の縦横の力学的構造美を壮大に感じさせる。そのむこうに見る大仏殿は、重厚を造形化した木造建築物として世界一であろう。


←南の一辺、鏡池越しに、左に中門、右に大仏殿を見る。この日、南大門から中門へとつづく道は、修学旅行の中学生であふれかえっていたが、この写真は、6年ほど前、早朝に撮影したものである。

  転害門

nara-tengaimon.jpg (94307 バイト) おもしろいのは、西の一辺である。ここは町方に融けている。西の一辺では西大門も中門も礎石しかのこっておらず、転害門だけが結界の威を保っている。

天平の創建以来の建物だが、佐保路(かっての平城京の一条大路)のざわめきに面しているところがさりげなくていい。

このあたりまで来ると、観光客に出会うことは少ない。通っているのは、主婦や子供たちである。門のすぐ前は国道369号線で、バス停がそばにあり、転害門を背にしてバスを待つ。

  二月堂への道

nara-dohyo-nigatudohe.jpg (123141 バイト) 二月堂へは、西のほうからやってきて、大湯屋や食堂のずっしりした建物のそばを通り、若狭井のそばを経、二月堂を左に見つつ、三月堂と四月堂のあいだをぬけて観音院の前につきあたり、やがて谷をおりてゆくという道がすばらしい。


司馬さんが好きな道のなかでも、2月堂手前のゆるい勾配の坂道が最も好ましく思える。写真家の入江泰吉さんも、このあたりを散歩するのがすきだったようである。

  二月堂

nara-dohyo-nigatudo.jpg (115658 バイト) 東域の傾斜に建てられた二月堂は、懸崖(けんがい)造りの桁や柱にささえられつつ、西方の天にむかって大きく開口している。西風をくらい、日没の茜雲を見、夜は西天の星を見つめている。


司馬さんは、二月堂に人格があるかのように表現している。それほど、二月堂が気に入っていたのであろう。