天主堂巡礼 大曽天主堂  長崎県新上五島町

   

海の天主堂

天主堂への石段をのぽると、広場の右手にマリア像があり、正面には煉面の塔屋をパックにキリスト像が手を広げている。日本の教会では必ずと言つていいほと聖像があり、マリア像が特に好まれている。「一般に日本庶民の宗教心理には、意志的な努力の積み重ねよりは絶対者の慈悲にすがろうとする傾向が強い。さぴしい父デウスのかわりに、自分たちを許し、その傷を感じてくれる存在を母マリアに求めた」と、遠藤周作氏は言う。

入口には、すのこの板があり、そこで靴を脱いで下駄箱に入れる。以前はどこの天主堂でも、日本人の生活様式に合わせて畳か木の床に直接座つていた。生活様式の変化にともない椅子が並べられるようになつたが、靴を脱いで中に入るという日本的な習慣は守られている。靴を脱いでいる間に、天主堂へ入るための心の準備が出来るような気がする。

扉は引き戸の場合もあるが、たいていはノブの付いたものが多い。扉の前で大さく深呼吸し、帽子を取つてそっとノブを回す。ステンドグラスの光が目に入り、ラウンド・ヴォールトの高い天井が空間へと視線を導いてくれる。視線の行き着く先にアプス(後陣)のステンドグラスがあり、祭壇に光を落している。

 

この天主堂は、対岸の国道から湾越しに見るのが最も美しい。遠洋漁業船が並ぶ港で忙しく働く人たち、湾を行き交う小船やフェリー、空には鳶が舞っている。緑の山を背にした丘の上に目を転じると、天主堂の塔が陽の光を受けて輝さ、そこだけは静寂な空間が広がっている。大曽はまさに海の天主堂である。
   
     
   
07/10/16 *istDS2
   


   

[天主堂巡礼]