寅さんが歩いた風景
  
第34作 寅次郎真実一路
吹上町、つくば市、 鹿児島駅前、枕崎市、加世田武家屋敷跡、坊津町
山川町鰻(うなぎ)温泉、桜島

 タコ社長の娘・あけみ(美保純)のことで喧嘩となり、家を飛び出した寅さんは
上野の焼き鳥屋で酔ってウサ晴らし。ところがカネがない。払ってくれたのは見知
らぬ男(米倉斉加年)。男は証券会社の課長だった。

 翌日、寅さんは課長を焼き鳥屋に誘う。翌朝目覚めたのは茨城県牛久沼の課長の
家だった。課長は早朝に出勤、家には美しい妻のふじ子(大原麗子)がいた。

 数日後、寅さんが牛久沼を訪ねると、課長は蒸発し行方不明になっていた。しば
らくして、課長を故郷の鹿児島で見た人がいるという情報が入り、ふじ子は出発す
る。寅さんもタコ社長に借金して同行する。あちこちと探しまわるが課長の行方は
わからない。沈みがちなふじ子を寅さんはなぐさめる。

 二人の旅が徒労に終わって数日後。旅に出ようとする寅さんの前に、ひょっこり
課長が現れた。寅さんは課長をタクシーに押しこんで牛久沼へと急いだ。息子と親
子三人抱き合う姿を見とどけ、寅さんはそっと課長の家を後にした。

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  ●薩摩湖畔 2014/1/21

オープニングの夢から目覚めるのが鹿児島県吹上町・薩摩湖畔の食堂松屋。
食堂の外に出ると、ポンシュウが乗った車がやってきて、寅さんは車に乗り込む。
近くには鹿児島交通の軌道があり、ラストシーンは伊作(いざく)駅で撮影された。
今、駅の痕跡はまったく残っていない。


波静かで穏やかな風景の薩摩湖。


ロケから約30年、
食堂松屋は廃屋状態だった。
イケダパンの看板は枠だけ残っていた。


   ●牛久沼 07/4/4

課長さんと飲んだ寅さんは、牛久沼の課長さんの家へ泊る。
翌朝、夜がまだ明けきらない頃、課長さんは自転車を重そうに漕いで出勤する。



ロケが行われたのは牛久沼のほとり、森の里団地。中央付近の白い車のあたりが課長さんの家。
ロケに使われた家には門があったが、今は門はなく車庫になっていた。

森の里団地の南に架かっている茎崎橋。

課長さんは、むこうからこちらへ、自転車で通り過ぎる。

この橋は、中央がやや高くなっていて、自転車の場合はしっかり漕がないと前に進まないのではないだろうか。

自転車を重そうに漕ぐ課長さんの姿に、課長さんの苦悩が滲み出ているようなシーンだった。

すっかり明るくなった頃眼を覚ました寅さんは、課長さんの妻・ふじ子と顔を合わせる。
世間話をしているうちに、家の中にふじ子と二人っきりであることを知り、あわてて立ち去る。
お守りを忘れた寅さんをふじ子が追っかける。



寅さんとふじ子が別れたあたり。
森の里団地の前には舗装道路があり、沼側には土の道がある。ロケ当時と変わっていなかった。

牛久沼から帰ってきた寅さんは、とらやのみんなにふじ子のことを話す。

 花にたとえりゃ、薄紫のコスモスよぉ。

 仮にオレがあんなきれいな奥さんをもらったとしたらだな、一日中その顔をじーっと見てる

 台所で洗い物をしている。そのきれいなうなじをオレは見つめている。
 針仕事をする。白魚のようなきれいな指先をオレはじーっと見惚れる。
 買い物だってついていっちゃうよ。大根をねぎっているその美しい声音(こわね)に思わず聞きほれる。
 夜は寝ない。スヤスヤと可愛い寝息をたてるその美しい横顔をじーっと見つめているな。


大原麗子は2年後に「新・喜びも悲しみも幾歳月」に灯台守の妻役として出演しているが、これが映画
出演の最後となった。当時40歳だったが、その後の20年余りは病気などで不遇だったという。

  ●鹿児島駅前 2014/1/23

    行方不明になった課長さんが鹿児島にいるらしいという情報に、寅さんとふじ子は鹿児島へ向かう。
   鹿児島空港から鹿児島駅へ。鹿児島駅前から市電に乗る。

   
   
左端が市電乗場、そのむこうが鹿児島駅、右手には桜島がでーんと見える。

  ●開聞岳 99/12/11

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発した課長さんを探すために、寅さんとふじ子は鹿児島へと旅立つ。

鹿児島空港から鹿児島駅へ、さらに指宿枕崎線で枕崎へむかう。車内では、寅さんが写真を持って、「この人を見かけたことはないか」と忙しく聞きまわる。

映画では、開聞岳(薩摩富士)を背景に、国鉄時代の赤いディーゼルカーが映し出されていた。

西大山駅は日本最南端にある駅。駅といっても、簡素なプラットフォームがあるだけで、駅舎はない。

  
指宿枕崎線・西大山ー大山、背後は開聞岳。

  ●枕崎駅 99/12/11

34-makurazaki.jpg (100655 バイト)課長さんのふるさとは、枕崎から三つ目の駅。しかし、寅さんとふじ子は、なぜか枕崎駅に降り立つ。

枕崎から三つ目は薩摩塩屋、ここでは絵になりにくかったため、枕崎駅に降り立つ設定にしたのであろう。

枕崎駅の外観はロケ当時とほとんど変わっていなかったが、駅舎内や駅舎裏は、廃屋のような状態になりつつある。
したがって、効率面から駅員は常駐していない。

   枕崎駅(昭和34年建造)。今、駅舎はない。

  ●加世田武家屋敷跡 2014/1/21

   課長さんの実家に泊まった翌日、鹿児島市の天文館通りで課長さんらしい人を見かけたという人をたずねる 。
   
その家が加世田武家屋敷跡。ここでもいい情報は得られなかった。
   タクシーの運転手に扮するのが桜井センリさん。寅さんが、運転手に事情を話し運賃を安くするように交渉
   する。二人のやりとりがおかしかった。

   
   
ロケ当時、左手奥に白壁の立派な建物があった。

  ●丸木浜 99/12/11

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次にむかったのは、課長さんが「子供を海水浴に連れてきたい」と言っていた丸木浜。


夏は海水浴やキャンプでにぎわう丸木浜も、今は誰もいない。鳥の鳴き声と打寄せる波音が聞こえるばかりであった。
   国道から見た丸木浜

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   南国の陽射しに美しく輝く丸木浜。       この辺りで、寅さんたちはバーベキューをする。


 ●鰻温泉 99/12/11

  寅さんとふじ子は、課長さんが「あそこだけはちっとも変わらない」と言っていたという鰻温泉をたずねる。
  ここは、課長さんが幼い頃、療養のため滞在したことがあるとのこと。

  民宿うなぎ荘に、車寅次郎の偽名で2日間滞在したことをつきとめるが、その先の足取りがつかめない。

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この辺りに車を止める。ロケ当時は、屋根の切妻
に「鰻温泉」と書かれていたが、今は ない。
鰻温泉は鰻池のほとりにある。鰻池は飲料用の
貯水池で静かなたたずまいを見せていた。
 
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課長さんが泊まった民宿うなぎ荘、今も
営業していたのがうれしかった。
うなぎ荘の隣の民家の鏝絵(こ
てえ)。鹿児島で初めて見た。
池のそばに立つバス停の標識、
時刻表を見ると朝1便のみ。

   鰻温泉をたずねたのち、宿をとる。寅さんが「運転手の家に泊まりに行く」というので、ふじ子は「ど
   うしてそんなことをするの」と寅さんをせめる。

     寅さん 「好きであんなヤツのところへ泊まりに行く訳じゃありません。旅先で妙なうわさが
          立たっちゃ、課長さんに申し訳ないと思いまして……」
     ふじ子 「寅さん、つまんない」
     寅さん 「奥さん、俺はきったねぇ男です。ごめんなすって」

   と言ってふすまを開けて部屋を出て行こうとするが、押入れと間違い、ふとんにぶつかる。気分はすっ
   かり「無法松」であったが、オチがあるところがやはり寅さん。

  ●桜島 90/9/15

34-sakurajima.jpg (93745 バイト)南薩摩をあちこち探しまわったが、課長さんの
行方は分からず、寅さんとふじ子は、相談の結
果、霧島温泉へ行ってみることにする。

映画では、霧島温泉をたずねるシーンはなく、
城山展望台から、ふたりで桜島をぼんやりと眺め
るところで、鹿児島の旅は終わる。

「寅さん、もう帰えろ」という、疲れたような
ふじ子の言葉に誘われて、寅さんはふじ子と帰
って行く。

   竜ヶ水付近から見た桜島。

<南薩摩の風景 >

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大根干し、手前は人参畑

火之神岬から望む開聞岳

アコウの根とつわぶきの花

南薩一の景勝地・秋目浦


[寅さんが歩いた風景]