寅さんが歩いた風景 第42作 ぼくの伯父さん

 満男に泉(後藤久美子)から手紙が来た。泉は、満男の高校時代の後輩で、両親
が別居したため、叔母さんのいる佐賀へ転校していた。

 満男の悩みに応じきれなくなっていたさくらは、旅から帰ってきた寅さんに頼む。
の飲み屋に満男を連れてゆき、満男が恋をしていることを聞きだす。調子に乗り飲
みすぎて二人とも泥酔。寅さんは、博と大げんかとなり家を飛び出す。

 満男の恋の悩みは日に日に大きくなり、バイクで泉のいる佐賀に向かった。佐賀
で満男は偶然にも寅さんに出会い、二人はさっそく泉の家を訪れた。泉は叔母の家
に世話になっでいたが、その叔母さん(檀ふみ)に寅さんの心は乱れる。

 泉の叔父(尾藤イサオ)は、旧家の格式を重んじる頑固な男。満男の恋はなかな
か思うように進まず、満男は泉の叔父とげんかし柴又へ帰ってしまう。若者の気持
ちを理解しょうともしない叔父に、寅さんはタンカを切ったあと、旅に出た。

 柴又に戻った満男は、泉のことを忘れようにも忘れられず、年が明けてもなお心
にひっかかっていたが、ある日、家に帰ってみると泉が会いに来ていた。

  42-post.jpg (70166 バイト)

  第43、44,45作へとつづくゴクミシリーズの第1弾。後藤久美子扮する泉は、葛飾高校から佐賀県小城
  高校へ転校、満男は受験浪人中。

  この作品から最終作の「寅次郎紅の花」までは、満男の恋の物語になっている。したがって、寅さんではなく、
  満男が歩いた風景の比率が高くなっている。また、徳永英明をBGMに使ったのも、この作品からである。こ
  の作品では、満男が九州へバイクを走らせるシーンで、「風になりたい」が効果的に使われていた。

  第42作では、ロケ地の千代雀酒造周辺と嘉瀬川の風景が素晴らしい。また、満男と泉が、バイクで泉の母の
  生まれ故郷(富士町東畑瀬でロケ)をたずねるシーンが印象的だった。

42-fukuroda.jpg (85236 バイト)冒頭のシーン。

列車の中で、寅さんが、若者に老人(尾形イッセー)に席を
譲れとしかる。老人扱いするなと突っぱねる老人とけんか
になり、外に出ろと言って列車を降りるのが水郡線袋田駅。

駅員になだめられ、ようやく仲直りをして、ご一行は次の
列車に乗る。

  袋田駅は1996年に建てかえられたようだ。
  新駅舎の左手に旧駅舎があった(02/9/21)

42-mituze.jpg (99624 バイト)42-mokumoku.jpg (87934 バイト)
  国道263号線旧道、第11カーブ(99/9/25)  三瀬トンネル入り口のモクモクハウス(99/9/25)
    カーブに止まっている車は筆者のHondaCR-V

  バイクで峠道にさしかかった満男は、カーブで対向してくるトラックを避けようとして転倒する。
  それが、この第11カーブ。国道263号線旧道三瀬(みつぜ)峠の富士町寄りでロケされた。

  転倒直後に通りかかった笹野高史扮するオジサンライダーに、傷の手当てを受け、カレーライスを
  ご馳走になるのが「モクモクハウス」。有料道路の三瀬トンネル入り口手前にある。

  その夜、ホテルの同じ部屋に泊まるが、オジサンライダーに迫られ、満男はホテルを飛び出す。
  毎度、笹野高史がいい味を出していた。

42-sannoh.jpg (150447 バイト)バイクで佐賀へやって来た満男は、泉が
寄宿している叔母さんの家を訪ねる。

佐賀市内から国道34号線で、嘉瀬川橋
を渡ると三日月町へ入る。嘉瀬川橋を渡
ってすぐ右折すると、この山王神社への
道に出る。

満男は国道207号線から嘉瀬川の土手
に出て、国道34号とクロスする地点ま
で土手の道を北へと走っている。

山王神社前を左に行った先に、泉が寄宿
している家がある。

この山王神社は、後日、泉と満男が待ち
合わせする場所としても登場する。

  国道側から見た山王神社付近、右は嘉瀬川の土手(99/8/31)

42-tiyosuzume.jpg (177531 バイト)ロケ地となった古川家の住居は、千
代雀酒造の建物群のひとつである。
左手のクスの木の下あたりに住居が
ある。

映画では千代雀酒造は煙突がチラッ
と見える程度であったが、高い煉瓦
の煙突、伝統的な日本家屋が素晴ら
しい。

  国道34号線から見た千代雀酒造全景(99/9/25)

42-furukawa.jpg (168430 バイト)満男は右手の生垣付近でバイクを止め、
奥に向かって声をかけるが返答がない。
そのとき、遠くで話し声が聞こえる。

泉が友だちと別れの挨拶をしてこちらへ
来るところ。蔵のあたりで、泉は満男に
気が付いて駆け寄る。





  煉瓦と白壁の蔵が印象的な古川家の入り口付近(99/8/31)

42-kasegawa.jpg (202205 バイト)
      嘉瀬川土手の道、なかなかいい風情。正面へ下ると山王神社(99/9/25)


      蔵の前で出会った満男と泉は、嘉瀬川の土手に座って話をする。
      それが、神社の右手付近の土手。

      嘉瀬川に夕暮れが迫ってくる。満男は、泉が以前からほしがっていたソングブックを渡し、
      「ベイビー、君は転がる石のように…」と口ずさみながら、泉に別れを告げてバイクにまた
      がって去って行く。抒情的な、いいシーンだった。

   その夜、満男は旅館で偶然に寅さんと出会い、翌日、満男は寅さんを伴って、再びここを訪れる。
   そして、夕食をご馳走になった後、家に泊めてもらう。

   翌朝、泉のおば寿子と寅さんは裏庭で話をする。

    
    
    
ロケが行われたのは白石町堤の奥村家の裏庭。
    佐賀県でよく見かけるクリークがあって、川岸に石段が設けられている。

    
    石垣は昔のままだったが、後ろの土蔵造りのような建物は新築になっていた。
    ロケが行われたのは25年前、当時畑だった裏庭は木が植えられ、右手の柿の木には実がなっている。
    建物の向こう側の表通りには、妻入り土蔵造りの建物が残っていて、古い町並みを形成している
    
(2014/9/25 EOS 5D)

  42-tateana.jpg (113452 バイト)    42-kamekan.jpg (97812 バイト)
  吉野ケ里の、復元された弥生時代の竪穴式住居(99/9/25) 展示室の甕棺(かめかん)内部

  寅さんは、おじいさん(叔母さんの義父)が率いる郷土史会のメンバーと一緒に吉野ケ里をたずねる。
  満男と泉も、バイクで吉野ケ里をたずねる。

  寅さんが竪穴式住居から出てきたところで、満男と泉に出くわす。そのときの寅さんの言葉。
  「なんにもない、なんにもないんだ。」

  吉野ケ里では、濠、城柵、物見櫓、高床式倉庫、そして竪穴式住居が復元されていて、古代の雰囲気が
  味わえるのがうれしい。寅さんは、甕棺内部の鮮やかな朱の色を見ただろうか。

  42-hatasehasi.jpg (169013 バイト) 42-hataseodoh.jpg (129239 バイト)
  畑瀬バス停付近から右へ、嘉瀬川にかかる畑瀬橋を渡って坂を少し上ると、公民館前のお堂に着く(99/9/25)


  吉野ケ里を見学したあと、満男と泉は、泉の母の生まれた所をたずねるため国道323号線を北へむかう。
  しばらく行くと、泉が指差す方向に畑瀬橋が見えてくる。

  坂を登ったお堂のそばにバイクをとめ、泉の母の家をたずねるが、留守番のおばさんは不在。二人はお堂に
  座る。満男は、近くでとった柿を食べている。泉は、両親が離婚することを告げる。
     
  ロケ地が富士町東畑瀬であることは、五十嵐助監督の本で知っていた。しかし、当時ダム建設の話が持ち上
  がっていたことから、古湯映画祭のホームページへ問い合わせをしたところ、当時とは状況が変わっている
  との連絡があった。

  現地をたずねてみると、確かに当時あったはずの民家がなくなってはいたが、畑瀬橋やお堂は、ロケ当時の
  ままで大変うれしかった。しかし、東畑瀬の集落は2002年完成の嘉瀬川ダムに沈む。

42-ogikohkoh.jpg (177100 バイト)寅さんは佐賀を発つ前に、泉が通学してい
る小城高校を訪ねる。門のところで寅さん
が待っていると、左手奥から泉が歩いてき
て寅さんに気付く。

授業開始のベルが鳴り教室へ戻る泉へ、寅
さんがやさしく語りかける。

 寅さん「あのな。早いとこ、この土地の
     言葉をおぼえて、いい友だちを
     つくんな。よかか?」

 
泉  「よかー!」

教室からはコーラスの声。

  
星影やさしく またたくみ空を
  あおぎてさまよい ほかげをゆけば

コーラスを背に、寅さんは去ってゆく。

  雨の小城高校、ロケ当時と変わっていなかった(99/8/31)

  
42-ogieki.jpg (123106 バイト) 42-ogiekikonai.jpg (125077 バイト)
  大正6年建造の唐津線小城駅(99/8/31)    寅さんが列車を待つ小城駅構内(99/9/25)

  小城駅舎右手の赤電話から、寅さんはくるまやへ電話する。満男の帰宅で、くるまやはお祭りの
  ようなさわぎ、そのにぎやかさが電話を通して伝わってくる。
  例によって、赤電話に10円玉をいれるというスタイル。

  電話を終えた寅さんは、切符を買おうとするが返答がない。映画では無人駅であったが、現在は
  駅員が常駐している。

  改札口を出た寅さんはホームに立つ。右手の椅子では、男子高校生がたむろしている。手持ちぶ
  さたの寅さんは、高校生たちの方へ近づいて行く。

   42-suga.jpg (138026 バイト) 42-ogiyokan.jpg (147971 バイト)
   長い石段の須賀神社(99/8/31)         須賀神社向かい、登録文化財の村岡総本舗(99/8/31)

  42作のラストシーン、須賀神社の石段の途中にある鳥居の前で寅さんとポンシュウがバイする。
  寅さんは鳥居の左で易の本を、ポンシュウは鳥居の右でレンタル杖をバイするが、易の本は売れ
  ず、レンタル杖は好調。

  須賀神社の石段は急で、ロケ当時にはなかった手すりが設けられていた。石段の真中の白い線が
  その手すり。

  朱塗りの橋が架かる川は、嘉瀬川の支流・祇園川。嘉瀬川は、北の富士町に端を発し、大和町、
  三日月町、久保田町などを経て有明海に流れこんでいる。嘉瀬川が、このあたりの風土を作り出
  しているような気がする。


[寅さんが歩いた風景]