寅さんが歩いた風景 46作寅次郎の縁談

 大学卒業を控えた満男は、就職試験に悪戦苦闘。さくらと博は腫れものにでもさ
わるかのようにしていたが、それがさらに満男を苛立たせ、満男は逃げるように家
を出、ふらりと高松行きの寝台特急「瀬戸」に乗ってしまう。

 満男が家を出て一週間後、寅さんが旅から帰ってくる。寅さんは、満男が送って
きた土産の住所をたよりに香川県琴島へと向かい、満男を探し出す。

 満男は島での暮らしに満足しているうえに、看護婦の亜矢(城山美佳子)にほの
かな恋心を抱いていた。寅さんは、満男が世話になっている田宮家に泊まることに
なり、当主(島田正吾)の娘・葉子(松坂慶子)に一目惚れしてしまう。

 葉子は神戸で料理屋をやっていたが、借金をつくり体をこわして島に戻ってきた
という。やさしく勇気づける寅さんに、葉子はぬくもりを感じるようになっていた。

 葉子は、満男の、寅さんが好きかとの問いに静かにうなずいた。葉子の反応に満
男はびつくりしたが、結局、寅さんは葉子の愛を受け入れることができずに、満男
とともに島を出る。柴又に帰った満男は就職活動を再開する。

 
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   劇中での寅さんのセリフ

       旅というのはな、行く先を決めてから出かけるもんじゃねえんだよ。
       汽車の窓からのんびり外を見ている。おだやかな瀬戸内海。緑の島。
       あー、行ってみたいな。傷ついた満男はふらり駅に降りる。

       日の暮れる浜辺にたたずみ、沈む夕陽を見つめる満男。ボォー、遠くを行く連絡船。
       ドォドォドォドォドォドォザブーン、寄せては返す波の音。
       瀬戸の夕焼けってのは、そりゃきれいだからね、おばちゃん。


   この映画で、雨の降るなか、西田敏行扮する浜ちゃん(釣りバカ日誌)が、「全然だめ」と言いながら
   とらやの前を通りすぎてゆくシーンがあった。これは、山田監督の遊び心だったのだろうか、それとも
   西田敏行さんの希望だったのだろうか。

 ■栃木県烏山町 02.9.22

冒頭のシーン。ポンシュウとバスを待つ寅さんが花嫁行列と出くわす。寅さんは、花嫁さんに「きれいだよ」と声をかける。

タイトルバックに入り、国指定重要無形民俗文化財の烏山町・山あげ祭のシーンが映し出され、石造りの建物の前で寅さんとポンシュウがバイをしている。寅さんは運勢占い、ポンシュウは怪獣 のおもちゃ。

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バス停と設定された付近から花嫁さんが出て
くる民家を見る。バス停の表示は畑中。

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栃木県では大谷石の建築物をあちこちで見かけた。
この建物は「中央」という交差点にあった。

 ■香川県・志々島(ししじま) 2000/2/17

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   家出した満男を探しに琴島へやって来た寅さんが、マフラーを風になびかせながらさっそうとこの港に降
   り立つ。満男が東京に帰るときに、看護婦の亜矢とつらい別れをする港でもある。


   映画では琴島ということになっていたが、ロケは志々島と高見島で行われた。志々島では船は桟橋の左側
   に着くが、映画では光線状態を考慮して右側に着けていた。

   おとずれたときは、菊などの花の出荷の時期で、農家の人たちが連絡船に花を積みこんでいた。島の人口
   は約40人、学校はなく、子供や若い人には出会わなかった。

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   船から降りた寅さんは海岸を左へ向う。反対側からきた満男と出会い、話をするのがこのあたり。
      寅さんは、右手の階段に腰掛ける。この階段の前に、木彫りの立派な記念碑があった。


     寅さん 両親の心配をよそに、この孤島でかわいい娘さんと歌をうたっていたかぁ。さぞ
         かし気分が晴れただろうな。さ、支度しておじさんと一緒に柴又へ帰ろう。

     満男  朝4時くらいに起きて漁に出たりするんだ。この新鮮な空気を吸いながら一日中
         働いているとね、おじさん、あぁ、俺は今生きてんだなって、そんな気持ちが心
         の底から湧いて来るんだよ。


   港のトイレに入った。トイレはきれいだった。入口に貼られたベニヤ板には、次のように書かれていた。

     このトイレは皆んなで使用するものです。後から来る方が、気持ちよく使用できる様に
     いつもきれいにしましよう。もしも壁に落書きをしたい方は、下の黒板に思いっきり書
     いて下さい。いつまでもきれいに使えるトイレの為に、皆様方の御協力を御願いします。

46-sisijima-hatake.jpg (194549 バイト)漁から帰って来た満男は、畑仕事を手伝う。仕事は、花が倒れないようにロープを張るものである。

そのとき、看護婦の亜矢が通りがかり、満男は仕事の手を休める。


志々島の花の時期は真冬である。ロケが行われたのは秋、まだ花はなかった。

この段々畑からは、瀬戸大橋が見える。思わず、『瀬戸の花嫁』の一節を口ずさんでしまった。


  段々畑とさよならするのよ。
  幼い弟、行くなと泣いた。


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看護婦の亜矢は連絡船でやって来る。亜矢が勤めるのが、この診療所。

ここを通りかかった満男に、窓から顔をだした亜矢が、一緒に昼ご飯を食べようと声をかける。


この道を少し進むと、島の墓地に出る。墓は石ではなく、木の祠である。通りががりのおじいちゃんに聞くと、以前は土葬だったとのこと。

診療所の手前を左に曲り、坂道を登って行くと、島でただひとつの寺・利益院に達する。さらに進むと見晴らしのいい尾根に出る。そこから少し下ると、志々島の大クスがある。
    

■■■ 志々島ウォッチング ■■■

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古い造りの公民館

島のお墓

志々島の大クス

瀬戸大橋が見える海岸

  ■香川県・高見島 2000/2/17

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港から右へ少し行くと、左手に坂道の入口がある。
入口のすぐそばに、高見小・中学校があった。コ
ンクリート2階建てで、まだ真新しかった。校門
の前に梅の木があり、美しい花を付けていた。

港で会ったおじいちゃんの話によれば、若い人は
みんな島を出て行くので子供がいなくなり、学校
は近々廃校になるとのことであった。

学校の前を通りすぎると、伝統的な民家が見えて
くる。

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港で出会った寅さんと満男は、この
坂道を登って行く。


積み上げられた石垣の上に立つ瓦屋
根の家。家と家の間には、細い道が
縦横にのびている。

何度か道に迷ったが、狭い区域なの
で、行ったり来たりしているうちに、
また同じ場所に戻って来る。


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坂道を登るのに疲れた寅さんは、消
防格納庫の前に座り込む。

満男は、泊まれる所を探しにゆく。
そのときに、坂道の上から葉子が降
りて来る。


寅さんと葉子の頓珍漢な会話が印象
的だった。

葉子  こんにちは。
寅さん こんにちは。
葉子  どちらかおたずねでしょうか。
寅さん さぁー、どちらでしょうか。
葉子  はぁ?

   
葉子に一目惚れした寅さんは、葉子の父の家へ案内する。
      それが、大聖寺前にある田宮家。残念ながら、ロケ当時の建物は撤去されていた。
      このあたり、老朽化による建物の倒壊・撤去が目立つ。

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   坂道から見た大聖寺、後方の島影は多度津。 この空き地に田宮家があった。

     葉子と満男の会話。

      
葉子 満男君、男の魅力はね、顔やお金じゃないんよ。あんたはまだ若いから、寅さん
         の値打ちが分からんのよ。

     
 満男 じゃぁ、お姉さん、分かるんですか。
      
葉子 分かるわ。
     
 満男 おじさん、どんな魅力があるんですか。       
      葉子 そうねぇ、あたたかいの。それも、電気ストーブのようなあたたかさじゃのうて、
         ほら、寒い冬の日、お母さんがかじかんだ手をじーとにぎってくれた時のような、
         体のシンからあたたまるようなあたたかさ。


 香川県・八栗寺 01.9.9 CAMEDIA

   琴島を出た寅さんと満男は、高松市内の祭りの雑踏の中で別れる。
   場面は変わって、満男が無事に柴又へ着いたどうか、寅さんがさくらへ電話をしている。


   寅さんが電話するのが四国第85番札所八栗寺の参道にある草だんごの店。
   八栗寺までケーブルカーがあって、この参道を登って行くお遍路さんは少ない。

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八栗寺参道、草だんごの店の前。店の横にはロケ地の看板。   八栗寺へのケーブルカー。

 香川県・富丘八幡宮 01.9.8 CAMEDIA

   正月をむかえた神社。寅さんは、参道の石段の下で犬のぬいぐるみを売っている。そこへ、晴れ着
   姿の女性が通りかかる。琴島の看護婦亜矢だった。そばには男性。新しい恋人か、と寅さんはひや
   かし、お祝いにとぬいぐるみを亜矢にプレゼントする。石段を登るふたりに「しあわせになれよ」
   と寅さんが声をかけると、ふたりは笑ってそれに応える。


   この映画のラストシーンであるが、ロケ地は小豆島土庄町の富岡八幡宮。かなり高い位置にあって
   眼下には穏やかな瀬戸内の海が見える。


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   参道の石段を見上げる(左)、山門から下を見る(右)。寅さんは石灯篭のそばで、ぬいぐるみを売っていた。