bag.gif (236 バイト) 心に残る言葉/男はつらいよ語録

 
      桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております……
      思い起こせば二十年前、つまらねぇことで親爺と大喧嘩、頭を血の出る
      ほどブン殴られて、そのまんまプイッと家をおん出て、もう一生帰らね
      ぇ覚悟でおりましたものの、花の咲く頃になると、きまって思い出すの
      は故郷のこと、……ガキの時分、鼻垂れ仲間を相手にあばれ回った水元
      公園や、江戸川の土手や、帝釈様の境内のことでございました。

      風の便りに両親(ふたおや)も、秀才の兄貴も死んじまって、今はたった
      一人の妹だけが生きていることは知っておりましたが、どうしても帰る
      気になれず、今日の今日まで、こうしてご無沙汰に打ち過ぎてしまいま
      したが、今こうして江戸川の土手の上に立って、生まれ故郷を眺めてお
      りますと、何やらこの胸の奥がポッポッと火照って来るような気がいた
      します。

      そうです、私の故郷と申しますのは、東京葛飾の柴又でございます。
                                   
        第1作男はつらいよ/冒頭の語り


      上等上等、あったかい味噌汁さえありゃ充分よ。
      あとはおしんこと海苔と鱈子(たらこ)一腹ね、
      辛子のきいた納豆、これにはね、
      生ネギをこまかく刻んでたっぷり入れてくれよ。
      あとは塩こんぶに生玉子でもそえてくれりゃ、
      もう何もいらねえよ、おばちゃん。
                                   
        第5作望郷編


      夏になったら、
      鳴きながら、必ず帰ってくるあの燕(つばくろ)さえも、
      何かを境にぱったり姿を見せなくなることもあるんだぜ。
                                   
        第7作奮闘編


      例えば、日暮れ時農家のアゼ道を一人で歩いていると考えてごらん、
      庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間、
      灯りがあかあかとついて、父親と母親がいて、
      子供達がいて賑やかに夕飯を食べている。
      これが……これが本当の人間の生活というものじゃないかね、君。
                                   
        第8作寅次郎恋歌


      言ってみりや、リリーも俺と同じ旅人よ。
      見知らぬ土地を旅する間にゃ、
      それは人には言えねえ苦労があるのよ……。

      例えば、夜汽車の中、
      いくらも乗っちゃいねえその客もみんな寝ちまって、
      なぜか俺一人いつまでたっても眠れねえ……
      真っ暗な窓ガラスにホッベタくっつけてじっと外を眺めているとよ、
      遠くに灯りがポツンポツン……
      あ−、あんな所にも人が暮らしているんだなあ……
      汽笛がポーツ、ポーツ……ピーツ。

      そんな時よ、そんな時、なんだかわけもなく悲しくなって、
      涙がポロポロと出たりするのよ。
  
    そういうことってあるだろう、おいちゃん。
   
                                
        第11作寅次郎忘れ名草


      私、近頃よくこう思うの、
      人生に後悔はつきものじゃないかしらって、
      ああすればよかったなあという後悔と、
      もう一つは
      
どうしてあんなことをしてしまったんだろうという後悔……
                                    
        第17作寅次郎夕焼け小焼け/志乃の言


      そりや好きな女と添いとげられれば、こんな幸せはないけどさ、
      しかしそうはいかないのが世の中なんだよ、
    
  みんな我慢して暮らしてるんだから、男だって、女だって。
                                   
        第20作寅次郎頑張れ!


      そりや今は悲しいだろうけどさ、
  
    月日がたてばどんどん忘れて行くものなんだよ。
    
  忘れるってことは本当にいい事だよ。
 
                                  
        第27作浪花の恋の寅次郎


      俺から恋をとってしまったら、何が残るんだ。
      三度三度メシを食って、ヘをこいて、クソをたれる機械、
      つまりは、造フン機だよ。
 
                                  
        第30作花も嵐も寅次郎


      あいつがしゃべれねえーてのは、あんたに惚れてるからなんだよ。
      今度あの子に会ったら、こんな話しよう、あんな話もしよう、
      そう思ってウチを出るんだよ。
      いざその子の前に座ると、ぜーんぶ忘れちゃうんだね。
      で、馬鹿みてーに黙りこくってんだよ。
      そんなてめえの姿がなさけなくって、こー、涙がこぼれそうになるんだよ。
      な、女に惚れてる男の気持ちって、そういうもんなんだぞ。
 
                                  
        第30作花も嵐も寅次郎


      そんな人生もあるのねぇ。
      明日何するかは明日になんなきゃ決まらないなんて、
      
いいだろうなぁ
 
                                  
        第31作旅と女と寅次郎/流行歌手はるみの言


      働くってのはな、
      博みたいに女房のため子供のために額に汗して、
    
  真黒な手して働く人達のことをいうんだよ。
                                   
        第39作寅次郎物語


      満 男「人間は何のために生きてるのかな」
  
    寅次郎「何て言うかな、ほら、
          あ−生まれて来てよかったなって思うことが何べんかあるだろう、
      
    そのために人間生きてんじゃねえのか」
                                   
        第39作寅次郎物語


      まず片手にさかずきを持つ。酒の香りを嗅ぐ。
      酒のにおいが鼻の芯にジーンとしみとおった頃、おもむろに一口飲む。
      さあ、お酒が入っていきますよということを五臓六腑に知らせてやる。
      
そこで、ここに出ているこのツキダシ、これを舌の上にちょこっと乗せる。
      これで、酒の味がぐーんとよくなる。
      それから、ちびりちびり、だんだん酒の酔いが体にしみとおってゆく。

                                   
        第42作ぼくの伯父さん/満男へ酒の飲み方を教える


      川が流れております。
      たゆまず流れつづける川をながめますと、何やら、わたくしの心まで
      洗い流される気がしてまいります。
      そうして、いつしか思いおこされるのは、わたくしのガキの頃でござ
      います。わたくしは川のほとりで生まれ、川をながめながら育ったの
      でございます。

      祭から祭へのしがない旅の道すがら、きれいな川の流れに出会います
      と、ふと足をとめ、柄にもなくもの悲しい気分になって川をながめて
      しまうのは、そのせいかもしれません。
      今頃、故郷に残したわたくしの肉親たち、たったひとりの妹さくら、
      その夫の博、息子の満男、おいちゃん、おばちゃんたちはどうしてい
      るのでございましょうか。

      そうです、わたくしの生まれ故郷ともうしますのは、東京は葛飾柴又、
      江戸川のほとりでございます。
                                   
        第44作寅次郎の告白/冒頭の語り


      おじさん、世の中でいちばん美しいものが恋なのに、どうして恋をする人間は
      こんなにぶざまなんだろう。
      こんどの旅でぼくが分かったことは、ぼくにはもうおじさんのみっともない恋
      愛を笑う資格なんかないということなんだ。いや、それどころか、おじさんの
      ぶざまな姿がまるで自分のことのように哀しく思えてならないんだ。
      だから、もうこれからはおじさんを笑わないことに決めた。
      だって、おじさんを笑うことは、ぼく自信を笑うことなんだからな。
                                   
        第44作寅次郎の告白/満男の語り


      寅さん「何写すんだい、水ばっかりで何もありゃしねぇじゃねぇか」
      典子 「何もないからいいのよ、ただ水と光だけ」
      寅さん「へぇー、そういうもんかね。大変だね、この道楽も金がかかって」
      典子 「まるで爪に火をともすように節約して、レンズ買ったりカメラ買ったり」
      寅さん「ふーん、車に乗って一年中旅暮らしか」
      典子 「一年中だなんて、そんなことできたらどんなにいいだろう。現実はね、
          せいぜい一週間よ。でもね、この一週間のために一年があるの」
 
                                  
        第47作拝啓車寅次郎様/琵琶湖のほとりにて


      拝啓、車寅次郎様。
      おじさん、ぼくはこの頃、おじさんに似てきたと言われます。
      言う人は悪口のつもりなんだけど、ぼくには、それが悪口に聞こえないのです。
      おじさんは、他人の哀しみや寂しさをよく理解できる人間なんだ。
      その点において、ぼくはおじさんを認めているからです。
 
                                  
        第47作拝啓車寅次郎様/満男の語り


      格好なんて悪くったっていいから、
      男の気持ちをちゃん伝えてほしいんだよ、女は。
      だいたい男と女の間っていうのは、どこかみっともないもんなんだ。
      後で考えてみると、顔から火が出るようなはずかしいことだってたくさんあるさ。
      でも愛するってことはそういうことなんだろ、きれいごとなんかじゃないんだろ。
 
                                  
        第48作寅次郎紅の花/リリーの言


[寅さんが歩いた風景]