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幻のような眼鏡橋
今までに500ヶ所くらいの眼鏡橋をた
ずね歩いたが、なぜか幻のようにいつも頭
からはなれない眼鏡橋がある。その橋の名
は、間戸橋という。
1992年10月、犬飼町・臼杵市・野
津町の眼鏡橋をまわり、その夜は竹田市に
宿泊した。翌日、緒方町の眼鏡橋を撮影し、
清川村から三重町へ流れる中津牟礼川に残
る眼鏡橋をたずねたのち、小都留という集
落をめざした。
山に向かって道なりに進むと、やがて民
家が見えてくる。その民家で眼鏡橋の場所
をたずねると、すぐ裏だと言う。中庭に車
を置かせてもらい眼鏡橋へ向かう。
川を挟んで民家と森があり、秋の夕暮れ
が迫っていてあたりは薄暗い。川には水が
少なく淡い光が川面を照らし、そのむこう
に黒いアーチが見える。
92/10/31
Pentax67/105mm
間戸橋の建造は1848年以前と推定されているが、正確な建造年はわからない。地元では
紅毛人(西洋人)かけたキリシタン橋と呼ばれている。石組みはかなり乱雑で、150年の風
雪を経てゆがみが出ている。
橋長10m径間5mであるが、アーチが二重になっていて一般の眼鏡橋よりも厚みがあり、
馬蹄形をしているため径間が実際より狭く感じる。
川面の岩肌を伝って流れる水音がかすかに聞こえ、木々を渡る風がさやさやと音を立ててい
る。あたりは静寂そのものである。やがて日が沈み冷気が漂う。アーチはさらに黒さを増して、
迫ってくる闇の中へと次第に溶け込んでゆく。
その夜も竹田市に宿泊し、翌日は、市内の笹無田井路橋・山王橋・住吉橋などを撮影して高
千穂へ向かったが、いつまでも間戸橋の黒いアーチがつきまとった。あの幻のような眼鏡橋は、
今も健在だろうか。
[眼鏡橋巡礼]
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