筑後川のほとりの宿で、寅さんは、一風変わった娘・愛子(岸本加世子)と知り合う。家出娘らしいが、寅さんの商売の″サクラ″役もこなす二人旅が始まった。
久留米水天宮の縁日で商売をしているとき、寅さんは道の向かいで商売をしていた
女(音無美紀子)に声をかけられた。聞けば、テキヤ仲間の常三郎(小沢昭一)の
女房・光妓で、常三郎が病気のため代わって仕事に出ているとのことだった。
翌日、寅さんは常三郎を秋月の町に見舞ったが、「俺が死んだら光妓を女房にして
やってくれ」と頼まれる。寅さんは、常三郎を元気づけるためと承知した。帰りぎ
わ、寅さんは、光抜から常三郎の余命がいくばくもないことを知らされた。
寅さんは柳川で愛子と別れて柴又に戻った。数日後、愛子が現れ、とらやに滞在す
ることになった。そんなある日、愛子の兄(地井武男)が訪ねてきた。マグロ船に
乗って家をあけることが多く、愛子はさびしさからフーテンになっていたという。
しばらくして、光枝から手紙が届いた。常三郎が他界し、上京して旅館の女中をし
ているという。数日が過ぎ、光妓がやってきた。寅さんは上機嫌で迎えたが、常三
郎の言葉を負担に思わないで、という光枝に寅さんはうなずくしかなかった。 |
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柴又で小学校の同窓会に出席しトラブルを起こした寅さんは、さくらたちに思いを残して再び旅に出る。
場面が転換すると夜明駅、久大本線上り線のプラットホームをこちらからむこうへ寅さんが歩いてゆく。
寅さんが駅を歩くシーンは多いが、この夜明駅のシーンは抒情的でいい。
 
久大本線下り列車が進入。右は日田彦山線上り列車。
日田彦山線ホームの駅名標。ともに99/8/25
夜明駅プラットホームから画面が展開し、筑後川の鉄橋が映し出される。
鉄橋の上を列車が走り、手前の沈下橋の上を寅さんが左から右へと歩いている。

夕暮れ迫る夜明ー筑後大石間の久大本線筑後川橋梁(99/8/31)
このシーンも、寅さんが歩く風景としては、非常に印象深い。ロケから20年近くになろうとしているが、
このあたりの風景はほとんど変わっていない。
第43作「寅さんの休日」にも、タイトルバックに沈下橋が登場する。
第43作が、日田市を中心にロケしていることから、この沈下橋を再び登場させたのではないだろうか。
ただし、第43作では、鉄橋側から撮影している。
夜明の旅館で知り合った寅さんと愛子は、田主丸の町を歩く。
法林寺の門柱のそばで、愛子に家出した理由を聞く。
そして、故郷の焼津へ帰るように説得するが、愛子は寅さんと一緒に旅がしたいと言ってつきまとう。
観念した寅さんは、愛子と一緒に月読神社の鳥居の前を通って田主丸駅の方へ歩いて行く。

浄土宗法林寺門前、朱色の文字が美しい。 |

田主丸は河童の町、あちこちに河童の像。
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月読神社、なんときれいな名前でしょう。(99/8/25) |
寅さんと愛子は、久留米水天宮のお祭りで、ハンドバッグをバイする。
バイの途中で昼食をとるのが階段状になっているあたり。
ここで、テキヤ仲間の常三郎の女房・光枝に声をかけられ、常三郎が病気であることを知る。

寅さんと光枝は久留米水天宮のこの場所で出会う。
水天宮の石段の下は筑後川の流れ(99/8/31)
久留米水天宮は、壇之浦に入水した安徳天皇をまつる全国水天宮の総本社で、大変風格のある神社。
筑後川河畔にあってロケーションもよく、境内のクスの緑がさわやか。
『男はつらいよ』には必ず神社が登場する。
ロケハンを担当していた五十嵐助監督は、神社の選び方を次ぎのように述べている。
映画の前半に出てくる神社は、町全体が見下ろせるような高台にある神社。
映画の中ほどでは街中の小さな神社でもよいが、終わり頃に出てくる神社は、エンドマークも出る
ので広々とした情景を撮れる場所がよい。

朝倉町菱野の3連水車、後方は筑後川の堤防。すぐ近くに2連水車もある。(99/8/31)
久留米水天宮でのバイを終えた寅さんと愛子は、朝倉3連水車近くの道端のわら束の上に座って、
筑後川の夕空をぼんやりと眺めている。
ロケが行われたのは、稲刈りが終わった後であったから水車はまわっていない。
動いていない水車はどこかもの哀しく、それが、夕暮れのシーンを効果的なものにしていた。
関連ページ 朝倉の揚水車
甘木市秋月で第28作のロケが行われたのは19
81年。このスナップ写真は、1978年に秋月
城黒門と黒門茶屋で撮影したもの。この頃の秋月
は、今よりもずっと静かだったような気がする。
78/9/23 MamiyaC330/105mm

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久留米水天宮でテキヤ仲間の常三郎
が病気であることを、女房光枝から
知らされた寅さんは、甘木市秋月に
常三郎を訪ねる。
お見舞いの包みを下げた寅さんは、
あちこちで道を聞きながら、やがて
眼鏡橋へとさしかかる。寅さんは、
左から右へと橋を渡ってゆく。
清流野鳥川にかかる秋月眼鏡橋。99/8/25
PentaxMZ3/28-70mm
常三郎の女房・光枝に送られて、寅
さんと光枝が画面左の道を歩く。
折りから秋の陽射しを受けて、秋月
城址のお堀端は美しい。
日本の秋の美しさとさびしさ、人の
命のはかなさを感じさせる印象的な
シーンだった。
杉の馬場。右手が秋月城址、現在は秋月中学校。99/8/25
PentaxMZ3/28-70mm
さらに、寅さんと光枝は、野鳥川沿
いの小道を歩く。
ここでの別れぎわに、常三郎がもう
長くはないことを、光枝は寅さんへ
打ち明け、泣きながら向こうへ小走
りに帰ってゆく。
ロケ当時は、左手の民家は白壁の古
い家であったが新築されていた。
土塀もきれいに修復され、土塀の途
中から先は空き地であったが、塀が
設けられ民家が建っていた。
野鳥川沿いの小道、どこか懐かしい感じがする。99/8/31
PentaxMZ3/28-70mm |