四国札所の石仏
遍路道の道標と石仏(5) 観自在寺・切旛道・清滝寺・常楽寺 |

蓮の花を懐く地蔵
四国札所では、数々の地蔵菩薩に出会った。供養仏として
造立されたものが多いが、願主の思いが込められた地蔵は、
それぞれに何かを語りかけていた。
第四十番札所観自在寺は、十二支菩薩で知られている。十
二支菩薩の向い側に小さな墓地があり、蓮の花を懐いた地蔵
が立っていた。
天明五年(一七八五)の銘を持つこの像は、すらりとして、
気品に満ちた表情をしている。
左肩に担ぐように蓮の花を懐き、茎を両手でしっかりと握
りしめている。台座にも蓮が刻まれていて、折りからの夕陽
を受けて美しかった。
『へんろ』1999年6月号

切旛寺への道標
第九番法輪寺から第十番切旛寺までは約四キロ、歩けば一
時間のみちのりである。この遍路道には辻が多く、左に曲る
ところを右に行けば道に迷ってしまう。そのせいか、この遍
路道には道標が多い。
道標は、四角柱に方角と距離を刻んだものが一般的である
が、上部に大師像が刻まれたものもよく見かける。
切旛寺への遍路道で出会った道標は、自然石を削って手形
と十番という文字を刻んでいるが、それと直角の側に菩薩が
浮き彫りにされている。
道標は、折りからの西日を浮けて美しい陰影を見せていた。
『へんろ』1999年7月号

清滝寺の本尊石仏
四国札所では、八十八カ所すべての本尊を刻んだ石仏を、
境内や参道に安置しているお寺がある。第三十五番清滝寺も
そのひとつである。
清滝寺へは、ミカン山を縫うように設けられた「八丁坂」
と呼ばれる急傾斜の道を登る。
境内には、見るからに古そうな苔むした本尊石仏が立って
いた。どの石仏も個性的な彫りである。日当たりが比較的よ
さそうな石仏の中で、第三十九番延光寺の薬師如来が目をひ
いた。
舟形石の上部と左右に文字が、その下に面長な如来が刻ま
れている。どこかユーモラスで心なごむ如来さまである。
『へんろ』1999年8月号

常楽寺のアララギ大師
第十四番札所常楽寺のある国府町には、国分寺、観音寺、
井戸寺、そして常楽寺の四ヶ寺の札所がある。まさに、札所
の密集地である。
常楽寺は大きな岩盤の上に建っていて、どこかなつかしい
風情のある池の前の石段を上がると、流水岩の庭と名付けら
れた露出した岩が、境内をうねるように本堂まで広がってい
る。
本堂の前にアララギの木があり、見上げると、二股に分か
れた幹の真ん中に、小さな石造の大師像がまつられていて、
実にやさしい表情でこちらを見ている。お遍路さんは、アラ
ラギ大師と呼ぶ。
『へんろ』1999年9月号
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